SB-Λ77の写真
Aurex SB-Λ77
PRE-MAIN AMPLIFIER ¥175,000
1980年にオーレックス(東芝)が発売した同社の最高級プリメインアンプ。この年,トリオの「Σドライブ」に対抗するかの
ように,スピーカをもフィードバックループに入れた「クリーンドライブアンプ」SB−66(¥69,800)を発売しました。その
SB-66を主にパーツの面から徹底的に磨きあげた上級モデルとして登場したのが,このSB-Λ77でした。大手パーツ
メーカーである東芝の本領発揮という感じでそこに投入されたパーツの凝りようはすごいものでした。                                               
SB-66の写真
 Aurex SB-66
PRE-MAIN AMPLIFIER ¥69,800
SB-Λ77の特徴の一つが,上記の「クリーンドライブ(CLEAN DRIVE)」でした。この「クリーンドライブ」は,+,−の2
本のスピーカーコードの他に,もう一つの第3のコードを−端子に接続し,スピーカーで発生した歪み成分を検知し,アンプ
内にフィードバックして,それに応じた歪み成分をキャンセルするよう帰還量を調節して送り出すというものでした。これによ
り,高調波歪が10分の1に,混変調歪みも大幅に低減するなどの歪み低減効果があるだけでなく,スピーカーを定電圧駆
動することと等しくなり,周波数特性がフラットになり,スピーカーコードのインピーダンスをキャンセルしてゼロにし,ダンピン
グファクターが無限大になるなどの効果がうたわれていました。形としては,トリオの「Σドライブ」の2本のコードのアースを
共用してコードを1本にしたようなシステムでした。「クリーンドライブ」は,実際に聴いた感じでは,「クリーンドライブ」の接続
にすると低音に力強さが加わるという感じでした。      

SB-Λ77の2つ目の特徴は,「Λループ」と称したパーツへのこだわりでした。SY-Λ88シリーズで「素子による音質設計」
を標榜してパーツに徹底してこだわり,そのため赤字になってしまったというオーレックスらしく,ここでもプリメインの枠を超え,
徹底して高品質パーツを投入していました。「Λループ」では,電源=出力ループでの音質劣化を除くため,この経路で使わ
れる素子,線類はすべて銅を使用するというこだわりでした。電解コンデンサーには,アルミにかえて銅箔フィルムを用いた
Λコンデンサーを使用し,パワートランジスターのコレクタは銅基板に,エミッタ・ベース・コレクタの端子は全て軟銅線に改良
し,それらをつなぐ線もすべて銅線にしていました。エミッタ抵抗には,固有抵抗が小さく抵抗の材料として使うのが困難だっ
た銅を用いたΛ抵抗を使用していました。銅箔で無誘導巻を実現したΛ抵抗は,純抵抗のような理想的な動作特性を持つと
いうことでした。                                                                    

パワートランジスターには,スイッチング速度が速く,高周波数まで増幅が可能なスーパーfTトランジスターを使用し,100W
(8Ω)の出力を得ていました。回路全体でも,要所要所に銅蒸着のΛコンデンサーや,Vコンを改良したVXコンデンサーなど,
高品質なパーツが投入されていました。電源トランスには,大型のトロイダル型を搭載し,2次側を,電圧増幅段用,電力増幅
段用,保護回路とランプ用にセパレートした3電源方式として,電源を介しての相互干渉を抑えていました。                                                       

SB-Λ77の内部
イコライザーアンプは,デュアルFETにデュアルトランジスターをカスコードブートストラップ接続した初段差動と同じくカスコード
ブートストラップ接続の2段目差動アンプによる低歪率イコライザーアンプとなっていました。MM/MC切換は,ゲイン切換方
式で,MC入力もFETによるICL構成となっていました。フォノ入力からSP端子間は,シンプルな2アンプ構成で,TUNER,
AUX,TAPE入力からはカップリングコンデンサーの入らないDC構成となっていました。パワーアンプは,イコライザーアンプ
同様に,デュアルFETにデュアルトランジスターをカスコードブートストラップ接続した初段差動と同じくカスコードブートストラッ
プ接続の2段目差動アンプによる低歪率DCパワーアンプとなっていました。                        

以上のように,「クリーンドライブ」という新回路方式に挑戦し,パーツに凝って作り上げたSB-Λ77でしたが,その優れた性
能の割には,家電に通じるブランドイメージの弱さからか,定評を得ることができず,一般に広く認知されることはありません
でした。しかし,「クリーンドライブ」の名と,その美しいグラスパネルのイルミネーションは,高域の抜けのよいきれいな音とと
もに,何か印象に残っています。                       
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。

 


素子技術が音質を決定。
Λループ採用クリーンドライブアンプ。


音の素顔が克明に描写されはじめる。
◎Λ抵抗により銅使用素子で統一されたΛループ。
◎リニアリティを向上させたΛ抵抗。
◎低歪率DC化を実現したイコライザーアンプ。
◎ダイレクトDC構成アンプ。
◎低歪率DC構成パワ−アンプ。
◎Λコン,VXコンの採用。
◎新開発電解コンデンサー(15,000μF/63WV)。
◎低歪化を実現。スーパーfγトランジスター使用。
◎トロイダルトランス採用の独立3電源方式。
◎RECセレクタースイッチ。
◎音質に優れたCR形トーン回路。
◎クリーンドライブ回路専用高速プロテクター。

●仕様●

●パワーアンプ部●


連続出力 100W+100W(20Hz〜20kHz・2ch・8Ω)
105W+105W(1kHz・2ch・8Ω)
全高調波歪率 0.007%(定格出力時)
混変調歪率 0.007%(定格出力時)
周波数特性 DC〜300kHz +0,−3dB
出力帯域幅 5Hz〜80kHz(IHF・2ch・8Ω,歪0.05%)
スピーカーインピーダンス 8Ω〜16Ω

 

●プリアンプ部●


入力
(感度/インピーダンス)
PHONO(MM) 2.5mV/47kΩ
PHONO(MC) 0.25mV/100Ω
TUNER,AUX,TAPE PLAY 200mV/50kΩ
録音出力 200mV
周波数特性 DC〜300kHz +0,−3dB
全高調波歪率 0.007%
トーンコントロール BASS(100Hz)±8dB
TREBLE(10kHz)±8dB
サブソニックフィルター 16Hz(6dB/oct)
ミューティング −20dB
イコライザー偏差 ±0.2dB(20Hz〜20kHz)
PHONO最大許容入力
(1kHz,歪率0.01%)
PHONO(MM) 300mV
PHONO(MC) 20mV
SN比
(IHF-Aネットワーク,ショートサーキット)
PHONO(MM) 90dB
PHONO(MC) 71dB
TUNER,AUX,TAPE PLAY 108dB

●その他●


電源電圧 AC100V(50/60Hz)
消費電力 170W
使用半導体 Tr80,Dio40,FET18,IC2
外形寸法 420W×151H×399Dmm
重量 11.5kg
※本ページに掲載したSB-Λ77の写真,仕様表等は1980年11月のAurexのカタログ
 より抜粋したもので,東京芝浦電気株式会社に著作権があります。したがって,これらの
 写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。
    
 
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