TA-F555ESXの写真
SONY TA-F555ESX
STEREO PRE-MAIN AMPLIFIER ¥128,000

1986年,ソニーが発売したプリメインアンプ。同年,TA-F333ESXで798クラスのプリメインアンプに衝撃を
与えたソニーから発売された上級機で,これも,当時クラス最大の物量投入が行われた1台として話題となり
ました。そして,この555もTA-F555ESX→TA-F555ESXU→TA−F555ESR→TA−F555ESG→
TA−F555ESL→TA−F555ESA→TA−F555ESJとモデルチェンジを受けながらロングセラーとなりまし
た。

TA−F555ESXの最大の特徴は,TA-F333ESX同様にソニー自慢の「Gシャーシ」と呼ぶ頑丈なベースシャ
ーシにありました。この「Gシャーシ」は,「アコースティカル・チューンド・G(ジブラルタル)・シャーシ」の略称で,
スペインの最南端の小半島で自然の要塞と呼ばれる「ジブラルタルの岩」にちなんで,堅く重い岩のようなシャ
ーシということで名付けられたと当時のカタログに説明されています。大理石の主成分である炭酸カルシウム
を不飽和ポリエステルに加え,グラスファイバーで強化した素材を一体成形したもので,クラス最大級の重量と
鉄板シャーシに比べ格段に優れた剛性を誇りました。非磁性体,非金属であるため,磁気的な歪みも発生せず,
熱にも極めて強いため温度変化による経時変化もほとんどないという優れたベースシャーシでした。形状も部分
振動や分割共振を排除するために,振動しやすい突起した部分をなくし,厚さを十分にとり縦横にリブを走らせて
剛性を高めていました。そのリブの厚みや間隔もランダムなものとして特定の共振モードを持たないようにされて
いました。この頑丈な「Gシャーシ」に,プリント基板やパワートランスなどの主要パーツを直付けして一体化し,さ
らに,連結アングルで各パーツを相互に補強し合うように取り付けるなど,全体を剛体化する構造になっていまし
た。パワートランジスタも,厚さ10mmのアルミ押し出し材の頑丈なヒートシンクに取り付け,そのヒートシンクも「G
シャーシ」に強固に固定され,防振対策が徹底されていました。

TA-F555ESXの内部

電源部は,S.T.D(Spontaneous Twin Drive)電源と名付けられた強力な電源部を搭載していました。これは,A
クラス段とパワー段に独立して整流回路を設け,独立して電源供給を行うことでAクラス段へのパワー段の干渉を防
ぎ,安定した動作と音の透明度をねらった設計でした。電解コンデンサーは,Aクラス段合計24,000μF,パワー
段合計31,000μFの大容量のものを搭載し,特にパワー段には,岡谷のVXコンデンサーがパラレルで搭載され
た,この時代には珍しい構成で,高域の改善が図られていました。電源トランスは,350VAの大型のものを2基搭
載した強力な電源部でした。この強力な電源により,1Ω負荷時550Wもの瞬時出力を実現していました。また,ES
フィルターによりACラインからのノイズ混入を防いでいました。電源コードは,極性表示つきOFCの円形断面キャプタ
イヤの電源コードが搭載されていました。

回路的には,フォノ・イコライザーアンプとパワーアンプのシンプルな2アンプ構成として,シンプルな回路構成の中に
クラスを超えた高品質なパーツや素材を投入する設計でした。その一つの表れが,強力な電源部や頑丈なシャーシ
でした。フロントパネル上のツマミ類はすべてムクのメタル製で重厚な作りとなっていました。パワー段は,高速出力
素子Hi-fγトランジスタを極小カットオフ領域で動作させ,スイッチング歪みやクロスオーバー歪みを低減させる「スー
パー・レガート・リニア方式」を採用していました。イコライザーアンプには,高域応答性に優れTIM歪みのないローノイ
ズHi-gmFETを採用し,MM/MC40Ω/MC3Ωの3段切替のカートリッジ・ロードセレクタを装備していました。また
トーンコントロールは,トーンアンプを使用せず,パッシブ素子のみで構成したシンプルな回路になっていました。ターン
オーバー周波数はBASS 200Hz/400Hz,TREBLE 3kHz/6kHzの切替可能となっていました。さらに,ソー
スダイレクトスイッチをONにすると,アッテネーターとパワーアンプを通過するだけの最小限の経路となり,よりピュアな
信号伝送・増幅ができるようになっていました。

以上のように,TA-F555ESXは,TA-F333ESXの上級機として,基本設計は受け継ぎながらも,各パーツ,構造に
さらに贅沢な作りがなされ,これもクラスを超えた重量級の高性能プリメインアンプとなっていました。どっしりと安定した
低域から高域までクリアな音をもった強力な1台でした。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
 


デジタルソースが伝える音楽の真の姿を
ありのまま描き出す−。
そのために,CD時代に求められる
オーディオアンプの素質を,
構造・回路構成・パーツすべての角度から
厳しく磨き抜きました。
◎音の透明度,解像力を大きく向上させる
 徹底した無振動・無共振設計のGシャーシ。
 ●パーツ実装時の防振効果を高める剛体設計
◎高ダイナミックレンジ,躍動感のある重低音を生み出す
 ツイン電源トランスのS.T.D.電源。
 ●スーパーレガートリニア方式パワーアンプ
◎デジタルソースの音の純度を守り抜く
 さらに徹底したシンプル&ストレート伝送。
 ●シンプル&ダイレクト・トーンコントロール
 ●ソースダイレクト・スイッチ
 
 
●主な仕様●


実効出力 180W+180W(20Hz〜20kHz,4Ω負荷) 
150W+150W(20Hz〜20kHz,6Ω負荷) 
120W+120W(20Hz〜20kHz,8Ω負荷)
出力帯域幅 10Hz〜100kHz(60W出力,高調波歪率0.04%,8Ω負荷)
高調波ひずみ率 0.002%以下(10W出力時,8Ω負荷)
混変調ひずみ率 0.004%以下(定格出力時,8Ω負荷,60Hz:7kHz=4:1)
スルーレイト 125V/μsec,250V/μsec(インサイド)
ダンピングファクター 100(1kHz,8Ω)
周波数特性 PHONO  RIAAカーブ±0.2dB 
CD,TUNER,AUX,TAPE  2Hz〜200kHz(+0,−3dB)
SN比 PHONO 87dB(MM),70dB(MC) 
CD,TUNER,AUX,TAPE 105dB
入力感度および 
入力インピーダンス
PHONO,MM 2.5mV/50kΩ 
MC(40Ω)  170μV/1kΩ 
MC(3Ω)   170μV/100Ω 
CD,TUNER,AUX,TAPE 150mV/50kΩ
出力電圧および 
出力インピーダンス
REC OUT 150mV/1kΩ 
SPEAKER 適合インピーダンス4〜16Ω 
HEAD PHONE 25mW/8Ω
トーンコントロール BASS(100Hzにて)  +4,−3.5dB(ターンオーバー周波数200Hz) 
                +6,−5dB(ターンオーバー周波数400Hz) 
TREBLE(10kHzにて) +7,−8dB(ターンオーバー周波数3kHz) 
                +4,−5dB(ターンオーバー周波数6kHz)
サブソニックフィルター 15Hz以下,6dB/oct
電源 AC100V 50/60Hz
消費電力 315W
大きさ 470(幅)×166(高さ)×436(奥行)mm 
 ※サイドウッド取りはずし時430(幅)mm
重量 26kg
※本ページに掲載したTA-555ESXの写真,仕様表等は,1986年
9月のSONYのカタログより抜粋したもので,ソニー株式会社に著作権が
あります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等することは
法律で禁じられていますのでご注意ください。
 

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