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SONY TA-F7B
INTEGRATED STEREO AMPLIFIER ¥178,0001976年にソニーが発売したプリメインアンプ。当時のソニーのプリメインアンプの最高級機にあたり,同社の
V-FET搭載プリメインアンプ第1号のTA-8650をより身近にしたともいえるモデルでした。パルス電源搭載
のTA-F6Bとデザイン的にはほとんど同一に見えますが,通常電源を搭載した重量級のプリメインアンプでし
た。TA-F7Bの特徴は,プリアンプ部からパワーアンプ部まですべてをDC構成としていたことと,各部にFETを
使用し,特にパワー段にソニー自慢のV-FET(縦型FET)を使用していたことでした。また,強力な電源部を
搭載していたことも特徴でした。イコライザーアンプは,初段にデュアルFETによるカレントミラー差動増幅を採用し,2段目は,定電流源負荷
でPNPトランジスタのダーリントン接続という2段直結構成のNF型イコライザーDCアンプとなっていました。
特に,初段には温度特性の揃ったデュアルFETを採用し,高い回路の安定度を確保し,カップリングコンデン
サを取り除いたダイレクトカップリング入力となっていました。また,RIAA再生カーブを作り出す帰還回路の
CR素子には,吟味されたスチロールコンデンサと金属皮膜抵抗が使用され,さらに,このRIAA帰還回路と
は別にFETによるDC帰還回路を採用して,アンプ回路の動作点の安定化を図っていました。フラットアンプは,初段にFETによる差動増幅,2段目が定電流源負荷PNPトランジスタという2段直結DC
アンプという構成で,入力はダイレクトカップリングとなっていました。パワーアンプのAクラス段は,初段にデュアルFETを用いたカスコード接続の差動増幅で,カレントミラー接
続となっていました。2段目は,定電流源負荷のカスコード接続という構成で,高域周波数での伝送能力の
低下を抑え,高い出力抵抗によりリニアリティを高めていました。
電力増幅段(B級増幅段)は,終段に優れたパルス応答特性をもつV-FETと高周波用バイポーラトランジス
タによるカスコード接続パラレルプッシュプル構成のピュアコンプリメンタリーSEPP-OCL回路を採用してい
ました。TA-F7Bでは,V-FET単独使用ではなく,高周波用バイポーラトランジスタと組み合わせることで,
持ち味をより生かす設計となっていました。さらに,各アンプステージの入力のダイレクトカップリング化,DC構成化を生かすために,各アンプステージ
をつなぐ結合コンデンサが可能な限り排除され,TUNER IN〜SPEAKER OUTまで1個だけという構成
となっており,位相ずれが起きにくく,応答特性のすぐれた全体の構成となっていました。
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電源部は,電源トランスを3個搭載し,十分な余裕とクロストークを徹底して抑えた設計となっていました。
まず,パワーアンプのB級増幅段での左右チャンネルの相互干渉をさけるために,電源トランスを左右独
立で2個という構成になっていました。この電源トランスは,オリエントコア・ハイビーZ6Hを用いた新開発
のトロイダルトランスでした。Z6Hは,厚さ0.3mmの方向性電磁鋼板で,効率がよく漏洩フラックスの少
ない電源トランスを可能とするため,小型で強力な電源トランスが実現されていました。TA-F7Bでは,2
個の電源トランスをシャーシを介して2個上下に配置していました。
B級増幅段との干渉をさけるために,パワーアンプ部A級増幅段とプリアンプ部用の電源トランスは別に
設けられ,結果として全体で3トランス構成となっていました。しかも,A級増幅段とプリアンプ部に各々制
御用トランジスタのベースバイアス回路にFETを用いた定電流回路を挿入したFETバッファ電源を採用し,
出力インピーダンスが低く,安定性の高い定電圧電源回路としていました。
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平滑用コンデンサーは,15,000μFを両チャンネル合わせて4本,計60,000μFの容量のものを搭
載していました。この電解コンデンサーは,アルミ電解箔の巻き込みによるインダクタンスを小さく抑える
ため,電極引き出し線を複数本としたマルチタブ方式を採用し,高域周波数でのインピーダンスの上昇を
抑えてアンプの高域特性の向上と動作の安定を図っていました。
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ボリュームは,32ステップのディテント型アッテネーターで,各ステップごとにトリミング行われ,左右チャン
ネルの連動誤差は0.5dB以内に抑えられていました。トーンコントロールは,ターンオーバー切替可能の
CR型で,挿入損失が14dBとなっており,14dBのゲインのトーンアンプで補っていました。トーンアンプは
初段にFET使用のダイレクトカップリング入力,2段目に定電流負荷の2段直結アンプとなっており,トーン
ディフィートスイッチでバイパスすることも可能となっていました。
その他,機能的には,オーソドックスながらも比較的多機能で,LOW FILTER,HIGH FILTER,−20dB
のミューティングスイッチ,REVERSE/STEREO/L+R/L/Rの5ポジションのモードセレクターなどが搭載
されていました。また,0.01W〜100Wまで直読のパワーメーターが装備され,デザイン的にもアクセントと
なっていました。以上のように,TA-F7Bは,ソニーが持ち前の半導体技術,回路技術を生かし,正攻法で性能を追求した意
欲作でした。V-FETを強力な電源部が支える,クリアな音が特徴的でした。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
低クロストーク化と,
V-FETを最大限に生かすことを
目指しました。
◎プリアンプ部に始まりパワーアンプ部まで,
すべてDCアンプ構成。
◎LR独立トロイダルトランス,プリ用FETバッファ電源で
低クロストーク化を実現。
◎リレー切替による,フォノ入力やスピーカー出力や
単純化された信号経路など,低クロストーク化と
SN比の向上を徹底的に追求しました。
◎大型パワーメーターを始め,操作性を考慮した
パネルレイアウトと各ファンクション。
型式 | インテグレーテッドステレオ
プリアンプ:イコライザーアンプ 初段デュアルFET,ダイレクトカップリング方式差動アンプ フラットアンプ 初段FET,ダイレクトカップリング方式DC差動アンプ トーンアンプ CR型トーンコントロール,初段FET,ダイレクトカップリング方式DCアンプ パワーアンプ:初段デュアルFET,ダイレクトカップリング方式ピュア・コンプリメインタリーSEPP DCアンプ終段V-FET |
半導体 | FET32石,トランジスタ89石,ダイオード34石 |
■プリアンプ部■
入力端子 | 入力感度 入力インピーダンス 最大許容入力(ひずみ率0.015%,1kHz) SN比 ネットワーク
PHONO1,2:2.5mV 50kΩ(入力容量100pF) 250mV 75dB A TUNER :150mV 50kΩ 95dB A TAPE1,2 AUX1,2 |
出力端子 | 出力電圧 出力インピーダンス
REC OUT1,2:150mV 10kΩ PRE OUTPUT:1V 1.5kΩ |
高調波ひずみ率 | 0.015%(1V出力時) |
混変調ひずみ率 | 0.015%(1V出力時,60Hz:7kHz=4:1) |
周波数特性 | PHONO1,2:RIAAカーブ±0.2dB
TUNER,TAPE1,2,AUX1,2:5Hz〜100kHz+0−1dB |
トーンコントロール | BASS(低音)
±10dB(30Hz,ターンオーバー周波数150Hz) ±10dB(60Hz,ターンオーバー周波数300Hz) TREBLE(高音) ±10dB(20kHz,ターンオーバー周波数4kHz) ±10dB(40kHz,ターンオーバー周波数8kHz) |
フィルター | LOW 12dB/oct(カットオフ周波数30Hz)
HIGH 12dB/oct(カットオフ周波数9kHz) |
■パワーアンプ部■
実効出力
(両チャンネル駆動) |
70W+70W(20Hz〜20kHz,8Ω,高調波ひずみ率0.015%) |
高調波ひずみ率 | 20Hz〜20kHz 5Hz〜50kHz
実効出力: 0.015% 0.05% 1W : 0.015% 0.05% |
混変調ひずみ率 | 0.015%(実効出力時,60Hz:7kHz=4:1)
0.015%(1W出力時,60Hz:7kHz=4:1) |
出力帯域幅特性 | 5Hz〜40kHz/8Ω(高調波ひずみ率0.015%) |
ダンピングファクター | 60(1kHz,8Ω) |
残留雑音 | 0.12mV以下(プリアンプ含む),8Ω,Aネットワーク |
SN比 | 110dB以上(クローズドサーキット) |
周波数特性 | DC〜100kHz+0,−1dB |
入力端子 | POWER INPUT
入力感度 1V(実効出力時) 入力インピーダンス 100kΩ |
出力端子 | SPEAKER 4〜16Ωのスピーカーに適合
HEADPHONES 8Ω以上 |
■電源部・その他■
電源 | 100V,50/60Hz |
消費電力 | 192W |
電源コンセント | SWITCHED(電源スイッチと連動)1個200W
UNSWITCHED(電源スイッチと非連動)2個合計200W |
大きさ | 430W×170H×420Dmm |
重さ | 20kg |
※本ページに掲載したTA−F7Bの写真,仕様表等は,1976年11月
のSONYのカタログより抜粋したもので,ソニー株式会社に著作権が
あります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等することは
法律で禁じられていますのでご注意ください。
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