「一日目」−1







「ほ〜〜〜」




く〜〜〜〜





「ほ〜〜〜〜〜〜〜〜」




う〜〜〜〜〜〜〜ん





「ほ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」




ぐ〜〜〜〜〜〜〜〜〜






「けきょ」






ゎはははははははははは




っておならじゃないよ(笑)
なんて誰に言ってるんだろ、私。



あ〜あ。
なんかいきなり目が覚めちゃった。





「ほ〜〜〜〜〜〜〜」



あ、またやってる。
なんて鳴声なんだろう。
あれ、うぐいすだよね。

うまく鳴けないから?
それとも
あれでうまく鳴いているつもりなんだろうか?

まだ習い始めてまもない子供が
たどたどしくピアノを弾く音色のようなもの。
あまりうまくもなく
でもなんだかいつまでも聞いていたいような。

で、ちょっとだけ笑いたくなるんだよね。
こういう場合って。




そんなうぐいすの朝のレッスンが
私の朝の目覚ましの代わりになった。




帝都から帰ってきたのは昨日の夜遅く。
駅まで迎えにきてくれた瀬戸おばさんに
連れられて来たのが「喫茶・みどりのいえ」
兼ここおばさんの家だって。

夜も遅かったからって昨晩はそのままばたんきゅ〜。
辺りが暗かったからどんな風景なのかな〜んも見てないので
どんなところなのかもよく分からなかったけど。




ザッ


「あら、もう起きたの。」

「うん、あのうぐいすに起こされちゃった。」




「ほ〜〜〜〜〜〜」



あ、まだやってる、あの子。



「じゃ、朝ごはんにしようか?
着替えて下に降りておいで。」

「はい、おばさん。」

「も〜、おばさん、じゃなくて瀬戸さんって呼んで
って言ってるじゃない。」


・・・・・


「も〜、なんでそこで悩むんだよ。
ま、呼びたくなかったらいいけど。
じゃ、下で準備しておくからね。」

「はぁい。」


だっておばさんって年齢でしょうが。
一応私のお母さんのお姉さんなんだから。
そのくらいいいでしょ。


って言いたくなる言葉をうん、と飲み込んだ。
だって、こんなこと言うときっと


「じゃあいいよ。とっとと家にお帰り。」


って言われるもん。
そんなこと言われたら・・・





ああ、なんかいや〜なこと思い出しそうだった。
はい、このお話はここでストップ!!

とにかく朝ご飯。
さぁて急いで着替えてっと。




「うわぁ、すご〜〜〜〜〜い。」




さっき、おばさんがカーテンを開けてくれてたから
窓から外の風景が見えるよねって思って近づいてみたら
ほんと、すごいとこなの。
ここ。


帝都で居た頃は周りが家ばかりだったから
余計に感動しちゃったのよね。

昨日の夜ここへ来るまでにすいぶん高く登ってのぼってきたような感じが
していたんだけれど。
すっごく山が深いところなの、ここ。
視線をず〜〜〜っと下に降ろして行っても
見えてくるのは大きな木ばかり。

ちょうどこの時期って木の葉の色がまだ出始めた頃のうすい黄緑色から
濃い緑色に変わり始める頃。
だからその緑色の色の深さっていうのかな。
いろんな色が楽しめてとっても奇麗
っていうより圧巻なんだよね、こういう風景って。
圧倒されっぱなしの中、私はふと疑問に思った。


こんな山の中
喫茶なんてやっててホントに大丈夫なんだろうか?
それよりも、人いるの。
辺りに家らしいもの見えないよ。



その辺、後でおばさんに聞いてみよう。
さぁて朝ごっはん♪