そして…ゆめのつづき… |
雷の音が聞こえる……… 傍らには黒髪の女性 目の前には7体の霊子甲冑 そして黒い髪の男性 金色の髪の少女……… 「レニ、そいつらを殺せっ。」 …………… 「レニ、思い出すんだ! 自分自身のことを! そして俺たちのことを!」 …………………… 「この花かざりいっぱいに込められた………………心を思い出してくれ!!」 真剣な眼差しで叫び続ける男性 「レ………ニ………」 悲しい表情でボクを見つめる少女 …………………… ………………………………………… ……………………………………………………………… 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……………………………」 叫び ボクの声 そして………雷の音 それはだんだんと大きくなる でも、どこか違う。 雷の音は少しも怖くない。 心地悪くない。 温かく慈愛に満ちた………雷鳴……… 「………レ………ニ………」 ふっとボクの肩に手をかけられた………ような気がした 雷の音は………もう………聞こえない……… |
「レ〜ニ ”れに”ってばぁ。 起きてよぉ〜。」 だ………れ……… ボクを呼ぶのは……… 「も〜、こんなところで寝てちゃダメじゃないの。」 ボクはゆっくりと目を開ける。 「あ、アイリス………」 「レニ、風邪ひくよぉ。」 「………ん………だいじょうぶ………だと思う。」 ばたん だめだ、まだ目を開けたくない 「も〜寝るなら部屋に帰って寝ようよ。ここじゃぁだめだよぉ〜。」 ……… 「ねぇ!」 ……………… 「ねぇっってばぁ〜。」 〜〜〜こぉらぁ。いつまで寝てるの。もう朝よ。起きなさぁい〜〜〜 ザッ カーテンをひく音 〜〜〜ほら、レニ。さぁ、もう起きて〜〜〜 柔らかい朝の光 葉を開き始めた萌黄色の草の芽達の匂い 外を飛び始めた小鳥達のさえずりの音 もう………起きなくちゃ……… ゆっくりと………ボクは目を開けた……… アイリスが居た 隊長が居た フントが傍らにちょんと座ってボクを見上げていた。 「あ!………………」 「おはよう、レニ。」 「おはよ〜、レ〜ニ。」 「ワン♪」 ここは何処なんだろう。 どうしてこんな所にボクは居るんだろう。 目覚める前までの出来事は何だったんだろう……… 「外で寝るにはまだちょっと早いよ。」 そう言って隊長は笑った。 「ワン♪」 そうだと答えるようにフントが一鳴きする。 「お庭のベンチに座っている姿が見えたから レニ、今日は早いんだなぁって思って出てきてみたら 寝てるんだもん。 アイリス、びっくりしちゃったよぉ。」 「………ごめん………」 「ね、どぉ〜してこんなところでねむっちゃったの。」 「………分からない………」 「え?」 「……………気持ちよかったから。 そう、昨晩は月夜だったし 花の香りが心地よかったから、散歩してたらつい………」 「…眠っちゃったんだね、ここで。」 柔らかな表情で隊長がボクの答えに続ける。 ボクは”こくり”とうなづく。 そして目を閉じる。 昨晩見た残像を目の前に浮かべようとして……… 花……… ………アイリス……… ……………隊長…………… さくら……… すみれ……… マリア……… カンナ……… 紅蘭……… そして…織姫……… 心配そうなみんなの顔が浮かんでくる。 ボクは……… ボクは そのとき……… 泣いていたのかもしれない 流れる涙はなかったけれど みんな悲しませたことを 苦しいって感じたから……… それが 今になってようやく 分かったような気がする。 ボクは……… 「ね、どうしたの、レニ?」 不安そうに声をかけるアイリス。 目を開けると彼女の顔がすぐ目の前にあった。 「えっ………と………」 戸惑いながらも ボクはようやく この言葉を言う機会に巡りあえたと思った。 今まで誰にも言うことのできなかったその言葉を……… 「おはよう、アイリス。」 うまく言えただろうか? うまく笑えただろうか? 「よかったぁ、いつものレニだぁ。」 「そうだね、アイリス。」 そう言うと隊長はボクの方へと顔を向け いつものようににっこりと笑って言った。 (いや、ボクにとってはその笑顔はいつものとは 違っていたように見えたけど) 「おはよう、レニ。」 「隊長………おはようございます。」 柔らかな白い光が降り注ぐ中 ボクはようやく目醒めたような気がした。 ボクにとっての本当の目覚め朝……… |
2002.3.15 |
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作品解説 |
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