PIONEER A-980
STEREO AMPLIFIER ¥89,800パイオニアが1980年に発売したプリメインアンプ。前作のノンスイッチングアンプの技術を受け継ぎつつ,パイオニア
ブランドで発売した無帰還方式が特徴の高級セパレートアンプ「C -Z1」「M-Z1」で開発された「スーパーリニアサー
キット」を搭載したプリメインアンプの中の最上級機でした。その個性的なデザインが好みを分けた部分もありましたが,
その音質は高い評価を得ていました。A-980の最大の特徴は,上述の「スーパーリニアサーキット」にありました。これは,トランジスターなどの半導体固有
の非直線性に起因する歪みを,逆モードの非直線性を持つ半導体によって打ち消すというもので,アンプ自体の裸特
性が大幅に向上するということでした。A−980では,パワー部初段に「スーパーリニアサーキット」が搭載されていまし
た。セパレートアンプの「Z-1シリーズ」のように全段無帰還というわけではありませんでしたが,従来の約1/1000の
NFB量に抑えられていました。パワー段とドライバー段には,B級アンプ方式のトランジスターのスイッチングによる歪みを追放する「ノンスイッチング回
路」を搭載していました。これは,米国スレッショルド社が開発した可変バイアス方式を基本としたもの で,「ハイスピード
バイアスサーボ回路」によって,入力信号の変動を常時監視し,トランジスターに常時一定の小電流を流して常に動作
状態に保つことで,原理的にスイッチングをなくすというものでした。さらに,採用するトランジスターを厳選し,ペア特性
の高いトランジスターを使用し,動作点を最適ポイントに設定することにより,よりリニアリティの高い入出力特性を実現
し,+側と−側の波形を重ねるときに生じるいわゆる「クロスオーバ歪み」も低減していました。イコライザーアンプとパワーアンプの初段の電源供給には,「クリーンサーボレギュレーター」を採用していました。これ
は,従来のアンプの電源部の直列制御型に対し,出力電流ループを小さくした並列制御にすることにより等 価的にイン
ピーダンスをゼロにし,他の信号回路への影響を抑制するもので,この結果,クロストーク特性が良くな り,セパレーショ
ンの優れた音質が実現されたということでした。また,イコライザーアンプ,パワーアンプそれぞれにDCサーボ回路を搭
載し,これにより,MC入力からSP出力部まで,信号系にある全カップリングコンデンサーをとりのぞき,全段ノンカップ
リングコンデンサーのDCアンプとしていました。A-980をはじめとする,当時のパイオニアのプリメインアンプのパネルデザインは個性的で,中央にアンプの動作状態
を集中的に表示する独特のもので,このA-980は,通産省の1981年度グッドデザイン部門別大賞を受賞していまし
た。実際,見やすく分かりやすい,グッドデザインでしたが,反面,それまでのコンポーネントや他社製品と組み合わせ
るとマッチングしないため,ユーザーからは賛否両論でもありました。実に印象的なデザインであったことは確かです。A-980は,その個性的なデザインと明るくメリハリのきいた音質で,当時高い評価を得ていまし た。実際,プリメインア
ンプ作りにうまさを発揮するパイオニアらしい秀作アンプだったと思います。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
スーパーリニアサーキット搭載。
斬新なデザインの中に先進の技術を
凝縮したプリメインアンプ。
トランジスターの非直線性(歪み)を打ち消す
◎スーパーリニアサーキット。
スイッチング歪みをゼロにした
◎ノンスイッチング回路。
信号系への悪影響をなくした電源供給方式
◎クリーンサーボレギュレーター。
DCサーボにより信号の入力から出力まで,
◎ノンカップリングコンデンサー化。◎動作状態を点灯表示するなど,斬新で機能美あふれる
集中表示パネルデザイン
◎より純度の高い音質を求めた
ラインストレートスイッチ
◎MM/MC切換え
◎サブソニックインジケーター
実効出力 | 90W+90W(20Hz〜20kHz,両ch駆動,8Ω) |
高調波歪率
(20Hz〜20kHz) |
0.008%(実効出力時)
0.007%(45W出力時,8Ω) |
混変調歪率
(50Hz:7kHz=4:1) |
0.008%(実効出力時)
0.004%(45W出力時,8Ω) |
出力帯域幅 | 5Hz〜40kHz(IHF,両ch駆動,THD0.008%) |
出力端子 | SPEAKER:A,B
TAPE REC:150mV |
ダンピングファクター | 60(20Hz〜20kHz,8Ω) |
入力端子
(感度/入力インピーダンス) |
PHONO(MM):2.5mV/50kΩ,負荷容量200pF,400pF
PHONO(MC):0.25mV/0.1kΩ,負荷抵抗0.1kΩ,0.033kΩ TUNER・AUX・TAPE PLAY1・2:150mV/50kΩ |
PHONO最大許容入力
(1kHz) |
MM:300mV
MC:30mV |
周波数特性 | PHONO(MM):20Hz〜20kHz±0.2dB
TUNER・AUX・TAPE PLAY:5Hz〜200kHz +0,−3dB |
SN比
(IHF,Aネットワーク,ショートサーキット) |
PHONO(MM):89dB
PHONO(MC):72dB TUNER・AUX・TAPE PLAY:105dB |
トーンコントロール | BASS:±10dB(100Hz)
TREBLE:±10dB(10kHz) |
フィルター | LOW:20Hz(6dB/oct) |
ミューティング | −20dB |
電源電圧 | AC100V,50/60Hz |
消費電力 | 185W(電気用品取締法) |
外形寸法・重量 | 420W×132H×423Dmm・13.3kg |
※本ページに掲載したA-980の写真,仕様表等は,1982年3月の
PIONEERのカタログより抜粋したもので,パイオニア株式会社に著作権
があります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等することは
法律で禁じられていますのでご注意ください。
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