1987年,ソニーが発売した,同社初の本格的セパレート型CDプレーヤーです。これまで同社には,別項で![]()
SONY CDP−R1+DAS−R1
DIGITAL REFERENCE SYSTEM
COMPACT DISC PLAYER
CDP−R1 ¥300,000
D/A CONVERTER UNIT
DAS−R1 ¥300,000
取り上げたCDP−553ESDとDAS−703ESのコンビがありましたが,これは単体CDプレーヤーをグレード
アップするという形で作られていたのに対し,本機は,最初からセパレート型としてのみ使うように設計され,プ
レーヤー部とDAコンバーター部はそれぞれ専用設計の本格的な高級セパレート型CDプレーヤーでした。アキ
ュフェーズが1986年に本格的セパレート型CDプレーヤーを発売していたので,それに続く形で出現し,国産
最高級機としてライバル機となりました。プレーヤー部のCDP−R1は何よりその強力なプレーヤーメカニズムが特徴でした。ソニーが誇る高速リニアト
ラッキングメカニズムをアルミダイキャスト製のボディーで包み,高い強度と精度を実現していました。サーボ系
もTSサーボと称する補償回路を備えたサーボシステムで,ディスクのキズにも強くトラッキングノイズも極小に
抑えられ,優れたトラッキング性能を持っていました。
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この高剛性で高精度なメカニズム部をFBシャーシというフレームとビームによって剛性を高めたボディーに納め
振動対策もしっかりとられていました。電源部も大型の電源トランスとデジタルノイズをカットするチョークトランス
の2トランス構成の強力なものでした。そのため,外部の他の機器へもノイズがのりにくい構造になっていました。
このような徹底した構成のため,重量は何とコンバーター部を持たないにも関わらず17kgもありました。
DAコンバーター部のDAS−R1は,8倍オーバーサンプリングの18ビット分解能のデジタルフィルターを搭載し
ていました。DAコンバーターにはオーバーラップスタガード方式という片チャンネルあたり2つのDAコンバーター
を並列駆動する方式を採用し,ノイズシェイピング技術とあわせ,低歪み,低ノイズを実現していました。(この並
列駆動は,現在アキュフェーズがMMBという名称で採用していますね。)そして,ソニーが高級機でマルチビット
方式を採用した最後のDAコンバーターになりました。これ以降,ソニーは1ビットに移行していきました。また,こ
のDAコンバーターには,宣伝はされていませんでしたが,現在,海外メーカー機に多く採用されているDSPが2
系統搭載されていたそうです。こうした点を見てもデジタル技術で先端を行くソニーの実力を感じさせられます。![]()
DAS−R1は,電源部も強力で,これまたデジタル用,アナログ用独立の2トランス構成で,内部スペースの3分
の2が電源部になっているほどでした。FBシャーシによる高剛性ボディーとあわせ,これまた,重量が何と17kg
もありました。アキュフェーズが先にセパレート機で提案した光接続を1歩進め,コンバーター部のクロックを基準に,同期信号
とデータの往復伝送を実現するツインリンクによる光接続を開発し搭載していました。もちろん同軸接続も可能で
した。音の方は,どっしりしたアキュフェーズ機に比べ,非常にクリアな透き通るような音が特徴で,初めて聴いたとき
には,そのずば抜けた透明感に驚きました。アキュフェーズ機とは違ったソニーの個性を音に表現していたように
思います。ソニーらしい洗練されたデザインとあわせ,CDプレーヤにおけるソニーの高い技術力を実感したことが
今でも強く印象に残っています。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
ゆっくりと熟成を深めて,ここに−。
愛聴盤にひそむ,音楽の
息ぶきを再認識させるでしょう。
CDP−R1
◎クロックのジッターを抑え,わずかな位相ひずみの
発生も拒否した「ツインリンク方式」。 ◎ディスクのキズに対する光学系のムダな応答を抑 えた,厳粛なサ−ボ「TSサーボ」。 ◎強度と精度を大幅に高めた,アルミダイキャスト・ ハウジング採用のリニアトラッキング・メカニズム ◎全体の強度を均一化し,音の響きまでも配慮した FBシャーシによる剛体構造。 ◎安定した電源供給を保証し,ACラインへのノイズ 混入を防止した2トランス構成。 ◎CDが秘める豊かな機能性を引き出す,多彩で実 用的なファンクション。 |
DAS−R1
◎8倍オーバーサンプリング,18ビット分解能の
エラーレス「デジタルフィルター」。 ◎再量子化ノイズを大幅に低減させる,巧みな ノイズ・シェイピング。 ◎ひずみとノイズを抑えた優れた音質を生む, オーバーラップ・スタガードD/A変換方式。 ◎不要振動・共振を極力排除する高剛性ボディー。 それを支えるFBシャーシ。 ◎デジタル,アナログ間の相互干渉を断ち,余裕 ある電力供給を保証する,強力ノイズレス電源。 ◎3系統の入力端子を装備し,32kHz/44.1kHz /48kHzのサンプリング周波数に自動切替え。 |
●CDP−R1 主な仕様●
形式 | コンパクトディスク・デジタルオーディオシステム |
ディスク | コンパクトディスク |
読み取り方式 | 非接触光学式読み取り(半導体レーザー使用) |
レーザー | GaAlAsダブルへテロダイオード λ=780nm |
回転数 | 約500〜200rpm(CLV) |
エラー訂正方式 | ソニースーパーストラテジー
クロスインターリーブ・リードソロモンコード |
デジタル同軸出力端子 | (ピンジャック)
最大出力信号レベル:0.5Vp-p 出力インピーダンス:75Ω |
ツインリンク端子 | (ツインリンク・ジャック)
光波長:800nm ファイバー径:0.2mm往復式 |
電源 | AC100V,50/60Hz |
メモリー | 1ヶ月以上保持(電源OFF後) |
消費電力 | 13W |
大きさ | 470(幅)×125(高さ)×410(奥行)mm |
重さ | 約17kg |
●DAS−R1 主な仕様●
デジタル同軸入力端子1,2 | (ピンジャック)
入力信号レベル:0.5Vp-p±20% 入力インピーダンス:75Ω |
ツインリンク端子 | (ツインリンク・ジャック)
光波長:800nm ファイバー径:0.2mm往復式 |
ライン出力端子 | (ピンジャック)
出力レベル:2.5V rms(MSB) |
チャンネル数 | 2チャンネル(ステレオ) |
復号化(D/A) | 16ビット直線 |
周波数特性 | 10〜20,000Hz +0,−0.5dB
(入力デジタル信号のサンプリング周波数44.1kHz以上にて) |
高調波ひずみ率 | 0.003%以下(EIAJ) |
信号対雑音比(S/N) | 110dB以上(EIAJ) |
ダイナミックレンジ | 97dB以上(EIAJ) |
チャンネルセパレーション | 100dB以上(EIAJ) |
電源 | AC100V,50/60Hz |
消費電力 | 25W |
大きさ | 470(幅)×125(高さ)×410(奥行)mm |
重さ | 約17kg |
※本ページに掲載したCDP−R1,DAS−R1の写真・仕様表等は
1988年3月のソニーのカタログより抜粋したもので,ソニー株式会
社に著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載,
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