KA-1000の写真
TRIO KA-1000
INTEGRATED APLIFIER ¥145,000

1980年にトリオ(現ケンウッド)が発売したプリメインアンプ。それまでの同社のオーソドックスなデザインの
プリメインアンプから大きくデザインを変え,コンストラクション等も新しい技術を大幅に取り入れた当時として
は(現在でも?)非常にユニークで独創的なアンプでした。

KA-1000の最大の特徴は,「Σ(シグマ)ドライブ」方式の開発・搭載でした。Σドライブは,「Σ結線による
駆動方式」としてトリオが開発したもので,通常のスピーカーコード以外にもう一系統Σコードによる結線を行
い,スピーカーまでもアンプのフィードバックの中に組み込んで最適なスピーカー駆動をしようというものでした。
当時のトリオのカタログによると,アンプ単体の歪みがいかに少なくても,スピーカーからの逆起電力(スピー
カーの動きの暴れによって発電作用が起こり,音楽信号とは関係ない電気信号がアンプに戻ってくるのだそ
うです。)によって実際には,多くの歪みが発生するということで,それを防ぐため,理想的なスピーカー駆動
が行われるというものでした。Σコードは,+−2本あり,+側ケーブルは,スピーカーの+側とパワーアンプ
部の帰還ポイントを結び,スピーカーの磁気回路が引き起こす様々な種類の歪みをスピーカーの入力端子で
制御する働きをし,−側ケーブルは,アースポイントと電源ループを分離する働きをしました。このΣドライブの
結果,ダンピングファクターは600に達していました。この技術は,あのL-02Aへと受け継がれていきました。

2つ目の大きな特徴は,非磁性体構造をとっていたことでした。これは,1979年発売のL-01Aで実現された
構造を受け継いだといえるもので,鉄材を使用することで発生するマグネティック・ディストーションを防ぐため
のものでした。底板は樹脂材として最も影響を受けやすい電力増幅部への干渉を排除し,側板にも樹脂材を
使ってイコライザーへの影響を抑えていました。さらにパーツ類からも磁性体を排除していました。

KA-1000の内部

3つ目の大きな特徴は,「ダイナミックパワーサプライ」でした。これもL-01Aを受け継いだもので,磁性体のかた
まりともいえる電源トランスを別筐体として,アンプ部の非磁性体構造を徹底するとともに,大型の電源部を実現
したものでした。電源トランスは,大型のものをLch・Rch独立で搭載し,電力増幅用のケミコンには,大容量の
10,000μFのものを4本搭載していました。Lch・Rch独立の2電源に加え,A級増幅部も別巻線による整流
回路を備え,全体として3電源方式となっていました。

イコライザアンプには,±30Vの高耐圧で使用してダイナミックレンジは270mV,0.003%(MM)以下の低歪
率,87dB(2.5mV)の高SN比という基本性能にすぐれた新ICを自社開発して搭載していました。この結果回路
の簡潔化による余分な線の引き回しを減らし,性能の改善を図っていました。MCにも対応し,ヘッドアンプではな
く,ゲイン切換によるワンNFループ方式で,信号経路の単純化が図られていました。

パワーアンプ部は,可聴周波数の全帯域に均一なNFBをかけることによりTIM歪みやスイッチング歪み抑える構
成で,「ニューハイスピードアンプ」と称していました。また,TUNER(AUX)端子からSP端子まで,低域カット用
のコンデンサーをひとつももたない「ストレートDCアンプ」としていました。放熱器には,熱伝導効率のよいヒートパ
イプを採用し,大電力部を集中配置することで合理的な内部レイアウトを実現していました。

全体のデザインは,非磁性体構造を表したような,非常に軽快ですっきりとした,ケンウッドのLシリーズセパレート
アンプにも通じるもので,主な操作系以外を下部の透明なシーリングポケット内に収めたフロントパネルも個性的で
した。機能的に特徴的だったのは,ボリュームで,スライド式のレベルコントローラーとワンタッチ式のフェーダーボタ
ンを備えたもので,軽くタッチするだけでフェードイン,フェードアウトができるようになっていました。その他,バランス
回路をパスして信号経路のシンプル化を図る「バランスジャンプ回路」,ターンオーバー2段切替式,ディフィート付き
のBASS,TREBLE独立トーンコントロール,サブソニックフィルターを搭載していました。

以上のように,KA-1000は,ケンウッドのセパレートアンプLシリーズ,高級プリメインアンプL-01Aなどの技術を
受け継ぎ,新たに「Σドライブ」を開発・搭載した意欲作でした。超弩級プリメインL-02Aへとつながるモデルとして
印象的な1台でした。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。


「Σ結線による駆動方式」完成
いま,トリオはΣドライブと命名
◎スピーカー入力端子での逆起電圧を制圧
◎スピーカーを100%ドライブ,
 アンプの夢を,いまΣドライブが実現
◎逆起ヒズミを抑えたΣドライブ
 次の時代をお聴きください


電源に凝る,つまり音に凝った。
100W+100W,
別筐体電源のΣドライブ・アンプ。

◎マグネチックディストーションを改善した
 非磁性体構造
◎大容量電源を搭載した
 ダイナミックパワーサプライ
◎新開発IC採用のMM,MCイコライザーアンプ
◎可聴帯域内均一NFB方式のニューハイスピード設計
 ストレートDC方式のパワーアンプ
◎ワンタッチ操作のフェーダー
◎レックアウト・セレクター
◎トーンコントロールとサブソニックフィルター
◎バランスジャンプ回路
●KA-1000 定格●
 

■総合特性■


定格出力 
  PHONO→SP端子 20Hz〜20kHz両ch動作8Ω

100W+100W
全高調波ひずみ率 
  PHONO→SP端子
    定格出力時  20Hz〜20kHz(8Ω)
  TUNER・AUX・TAPE→SP端子
    定格出力時  20Hz〜20kHz(8Ω) 
    1/2定格出力時 20Hz〜20kHz(8Ω)
0.007% 

0.005% 
0.005%

混変調ひずみ率(60Hz:7kHz=4:1) 
  TUNER・AUX・TAPE→SP端子(定格出力時,8Ω)

0.005%
周波数特性(TUNER・AUX・TAPE→SP端子) DC〜400kHz −3dB
ダンピングファクター 100Hz
  アンプ単体
  Σケーブル終端

600
600
入力感度およびインピーダンス 
  PHONO(MM)→SP端子
  PHONO(MC)→SP端子 
  TUNER・AUX・TAPE→SP端子

2.5mV 47kΩ 
0.2mV 100Ω 
150mV 47kΩ
SN比(IHF−A) 
  PHONO(MM)→SP端子 
  PHONO(MC)→SP端子 
  TUNER・AUX・TAPE→SP端子  

87dB
67dB
105dB
トーンコントロール
  BASS   200Hz
  BASS   400Hz 
  TREBLE 3kHz
  TREBLE 6kHz

50Hz ±7.5dB
100Hz ±7.5dB
10kHz ±7.5dB
20kHz ±7.5dB
ラウドネスコントロール(Vol−30dB) +10dB 100Hz
サブソニックフィルター(−3dB) 18Hz 6dB/oct
ライズタイム TUNER・AUX・TAPE→SP端子 0.9μs
スルーレート TUNER・AUX・TAPE→SP端子 ±120V/μs

 

■イコライザーアンプ部(PHONO→TAPE REC)


PHONO最大許容入力 
  PHONO(MM) 1kHz 
  PHONO(MC) 1kHz 

270mV(ひずみ率0.003%) 
15mV  (ひずみ率0.003%)
PHONO RIAA偏差  20Hz〜20kHz   ±0.2dB

 

■出力レベルおよび出力インピーダンス■


TAPE REC PIN 150mV/330Ω

 

■電源部その他■


電源電圧・電源周波数 100V 50Hz/60Hz
定格消費電力(電気用品取締法に基づく表示) 320W
電源コンセント  電源スイッチ連動
            電源スイッチ非連動
2  
2 
本体寸法(幅×高さ×奥行)    440×123×375(mm) 
パワーサプライ寸法(幅×高さ×奥行) 140×123×358(mm)
重量 14.4kg(本体+電源)
※本ページに掲載したKA-1000の写真,仕様表等は,1980年
 9月のTRIOのカタログより抜粋したもので,ケンウッド株式会社
 に著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載
 ・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。
 

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