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KENWOOD L−08C
STEREO CONTROL AMPLIFIER ¥180,000
トリオ(現ケンウッド)が,1980年にKENWOODブランド(当時は,実験的高級機専門ブランドだった)で発売したプリ
アンプ。モノラルパワーアンプL−08Mとの組み合わせが想定されたモデルで,ΣケーブルによるΣ結線でプリ,パワ
ー間を接続するようになっていました。(このあたり,当時オンキョーが発売していたP−309とM−509のダブルスー
パーサーボも似たものがありました。)すっきりした未来的なデザインと共に個性的な設計のプリアンプでした。L−08Cの最大の特徴は,上記のΣ結線によるΣドライブにありますが,これは,通常の+と−の結線以外に,相互
干渉による歪み成分を検出しキャンセルするための結線がなされているもので,一種のループがもう一つ作られている
形になっていました。これにより,プリアンプとパワーアンプの電位差やプリアンプからパワーアンプへ送られる信号中
の歪み成分も極少になり,プリアンプがパワーアンプを100%ドライブするという理想に近づこうとするものでした。何と
L−08Cの出力インピーダンスは,Σ結線の先端で,0.01Ω(1kHz)と,通常の1万分の1という驚異的なローイン
ピーダンスになっていました。トリオはこれ以降L−02Aというインテグレーテッドアンプの超弩級機に挑戦し,一体型
ならではの良さを追求していきます。そのためか,セパレートアンプはこれ以降開発されておらず,プリ・パワー間のΣ
ドライブは見られなくなりました。せっかくの独創的な技術なのに残念なことです。
電源部は,フラットアンプ,MMイコライザーアンプなど各ステージ独立,左右独立の電源構成になっていました。別巻
トランスと専用の整流平滑回路からなる専用電源で,お互いの干渉を防ぐマルチ電源と呼んでいました。さらに,アース
回路に交流電流が流れないようにする「電源電流吸収回路」というものを備え,電源部から負帰還をかけた定電圧電源
をなくしていました。当時のアンプらしく,イコライザー部もコストをかけてあり,3段差動DC構成で,0.0007%の低歪
みを誇るものでした。MCヘッドアンプも搭載し,4パラ差動,コンプリメンタリー出力で,これまた,0.0007%の低歪み
を誇っていました。ツマミ類をシーリングパネルに隠したシンプルな薄型のスタイルは未来的なものでしたが,そのボディーは,底板とケー
スは樹脂製になっており,非磁性アルミ材の背面パネルとあわせ,構造体からできるだけ鉄を追放し,磁性を帯びるこ
とによる歪み「マグネティック・ディストーション」を排除するようになっていました。この非磁性体構造は,後のプリメイン
アンプの名機,L−01A,L−02Aに受け継がれていくことになりました。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
| ◎新開発の「マルチ電源+電源電流吸収回路」により,
音質劣化の要因である”定電圧電源”を追放 |
| ◎マグネチック・ディストーションを追放した非磁性体構造 |
| ◎機能美を追求したイルミネーション表示の
インプット・インジケーター |
| ◎操作性にすぐれたコントロールポケット |
| ◎周波数連続可変のラウドネス・コントロール |
| ◎3段差動DC構成MMイコライザーアンプ |
| ◎外来ノイズにつよい,4パラ差動MCヘッドアンプ |
| ◎ニュー・ハイスピードアンプ |
| ◎ワンチップ・デュアルFET使用フラットアンプ |
| ◎大電流オペアンプによるヘッドフォンアンプ |
SPECIFICATIONS
●オーディオ特性(AUX・TAPE→PRE・OUT/PHONO→PRE・OUT)●
| 全高調波ヒズミ率(AUX→PRE・OUT) | 1V出力時20Hz〜20kHz 0.0007%
10V出力時20Hz〜20kHz 0.0008% 1V出力時20Hz〜20kHz 0.0008% |
| 全高調波ヒズミ率(PHONO→PRE・OUT Vol−30dB) | 1V出力時20Hz〜20kHz MM 0.0007%
1V出力時20Hz〜20kHz MC 0.0007% |
| 周波数特性 | DC〜850kHz −3dB |
| PHONO RIAA偏差 20Hz〜20kHz | ±0.2dB |
| SN比 | PHONO MM(2.5mV) 90dB
PHONO MC(0.1mV) 70dB TUNER・AUX・TAPE PLAY 106dB |
| サブソニック・フィルター | 18Hz 6dB/oct |
| ラウドネスコントロール | 30Hz〜100Hz連続可変 +3dB +6dB +9dB |
| ライズタイム | (±0.1V ±1V ±2.5V)Vol MAX 0.4μs |
| 入力感度およびインピーダンス | PHONO MM 2.5mV,50kΩ
PHONO MC 0.1mV,100Ω TUNER・AUX・TAPE PLAY 150mV,25kΩ |
| PHONO最大許容入力 | MM 1kHz ヒズミ率0.0007% 320mV
MC 1kHz ヒズミ率0.0007% 14mV |
| 出力レベルおよび出力インピーダンス | TAPE REC PIN 1kHz 150mV,420Ω
PRE OUT 定格出力 Σケーブル1.5m先端 1V,0.01Ω以下 |
| 最大出力 | 10V |
●電源部その他●
| 電源電圧・電源周波数 | 100V 50/60Hz |
| 定格消費電力(電気用品取締法に基づく表示) | 50W |
| 電源コンセント | 電源スイッチ連動 2個 200W
電源スイッチ非連動 1個 500W |
| 寸法 | 幅440×高さ74×奥行387mm |
| 重量 | 5.3kg |
※本ページに掲載したL−08Cの写真,仕様表等は1980年12月のTRIO(KENWOOD)
のカタログより抜粋したもので,ケンウッド株式会社に著作権があります。したがって,
これらの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意
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